等々力の飯田十基監修の庭園を見る ー等々力渓谷・日本庭園ー
Apr 22, 2020
1 minute
文・写真=戸田芳樹(株式会社戸田芳樹風景計画)
協力=世田谷区公園緑地課 玉川公園管理事務所
等々力渓谷は自然の深い爪痕である。ともかく深い。等々力駅から少し歩いた入口より10m以上下って行くと、そこには地上の閑静な住宅街とは全 く別の世界が広がっていた。周囲が静かなので、せせらぎと鳥のさえずりが聞こえるだけの世界と言いたいが、休日ではそうもいかない。狭い園路を大 勢ひしめき合い、ゆっくりと立ち止まり景色を見る余裕もないくらいだ。木もれ日の下、緩く曲線を描く園路を川沿いにかなり下って行くと、飯田十基が 関わったという庭園の入口が見えて来る。
この庭園は1980(昭和55)年に発行された「飯田十基庭園作品集」に1975(昭和50)年の作品と記されており、監修もしくは指導をしたと伝えられ ている。飯田十基(1890~1977年)の作品は個人庭園が多く、なかなか見る機会が少ない。この日本庭園は飯田が全面的に作庭していないらしい が貴重な庭園として知られている。現在、世田谷区が管理しており、自由に見られるとの情報を受け、大きな期待を持って訪ねた。
門から上る園路の景観
渓谷側に庭園入口があり、そこから入ることと した。入口門は園路から2段上がり、床を石張りし た格式の高い建築で、フレームに枠取られた背 後の景観は野趣に富み、庭園と言うより林地の 風情を漂わせている。正面中央の小さいがゆっ たりとした石が景を添えており、注意深く見ると流 れの末流とおぼしき石組が見える。入口門周辺 において早くも庭園の景色は作られており、まずは ゆっくりと佇んで眺めた。
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